夫と二人で少し遅い夏休みの旅行に出かけた。
昨年までは、子供達三人を含んだ家族五人での夏休み旅行をするのが毎年恒例だった。

今年の春の長女の海外ウェディングが、多分私達家族の一つの区切りになった。
四半世紀に渡って繰り返した家族の風景が、ゆっくりと変化し、また次の形を探そうとし始めている。


夫と私は、好みや感覚がほぼ正反対だ。

私はおしゃべりするのが好きだけれど、夫はあまり話さない。
私は文字を読むのが一番好きだが、夫はテレビを見ることが大好きだ。

映画を観るのは二人とも好きなのだけど、ヒューマンドラマか恋愛ものが好きな私と、サスペンスかアクションを好む夫では、なかなか意見が合うことはない。

時々「観たい!」が交差するのは、SFモノかストーリー性のある話題の邦画で、そういう数少ないチャンスは、二人で映画館に出かける貴重な機会となる。


自分の「したい・行きたい」を形にするのが、旅行の醍醐味だ。なので、「したい・行きたい」が合わない相手と、楽しく過ごすためには工夫がいる。

今回の旅の目的は、忙しい夏を過ごしていた夫に気分転換をしてもらうことだった。
もちろんそれだけを大切にするのではなく、可能な範囲で私自身も楽しもうと決めていた。

あまり自分の希望を言わない夫がぼそっと言った「USJのハリーポッターなら行きたいな」を形にして、私の好みは泊まるホテルで満たすことにした。

「おじさんとおばさんが二人でUSJ行ってどうするの?!」と冷たく言う娘の声は無視をして、二人でもとことん楽しもうと決めていた私達は、秋雨前線でずっと雨マーク100%の予定だった旅程の中日、どうやら台風までこちらに向かってきていたのに、USJにいる間はほぼ曇りで傘をささずに過ごすことができたのだった。

いつもはほとんど話をしない夫と、ハリーポッターを待つ間の二時間、普段はすることのない深い話を互いの目を見て話し、最後には科学の粋を尽くしたアトラクションに興奮と感動を分かち合った。

娘の心配をよそに、二人ともが楽しんだ一日となった。
それ以上に、夫とハートを分かち合いたいのにいつもはそれができない私にとって、とても貴重な時間を過ごすことができたのだった。


工夫して予約したちょっと高級なホテルに泊まり、心地よいマットレスに歩き疲れた体を休め、翌朝は美しいお庭を眺めながら美味しい朝食ビュッフェを楽しんで、急がず寄り道をしながら、ゆっくり雨の中を自宅へと戻る道を走った。

二泊三日の短い旅行ではあったが、色々なことを感じ、考えた。



どれだけ話しても話し尽きない相手、私の好みを理解して寄り添ってくれる相手、思いやり深く私にいつも関心を持ってくれる相手。そういうパートナーに出会いたいと、ずっと願っていた。

その正反対とも言える夫とのパートナーシップは、私にとってはいつも満たされない悲しいものであった。

親業が物理的に終わりに近づいて来たころから、彼との関係性は最も大きな課題の一つだった。親として子を通して繋がっていた時期は終わりを迎え、私達夫婦は、じかに向きあい繋がることを抜きにして、これまでのように過ごすことはもう無理だった。



紆余曲折を経て、私は自分の心の望みをようやく知った。

たとえ心の中でのことであっても、夫の代わりになる人を探すことはもうやめた。

夫が私と作るこれからの未来を本当に望んでくれていることを知ったのと同時に、私自身も彼と共に人間をやり遂げることを望んでいることに気がついたからだ。

私が愛しているのは夫の魂であり、決して彼の趣味や言動ではなかったのだ。



相変わらず夫とは、あまり話はかみ合わない。
でも、私には話が弾む友人達はたくさんいるし、話したくないときの夫の寡黙さは心地よい。

行きたい場所や、観たい映画が合わないときは、その旅行の目的に沿った場所を優先したり、観たい映画が上映されるまで無理して一緒に観に行かない。


我ながら、一緒に生きるのがうまくなったなと思っている。
夫も、何度か大きくぶつかった山を越えた度に、意識的にそうしてくれるようになったのが感じられる。



今回の旅行を通して、ここしばらくの私の考えが改めて証明されたような気がしたのだった。

感性の合わない夫との旅行でも、心から楽しめる自分。
お互いに無理をせずに、でも思い遣りをもって歩み寄ることができたら、それはお互いを幸せにするのだと知った私達。

「三人子供を産んだのは、鎹(かすがい)が三個もなければ私達夫婦は一緒にいることができないからだよ。」と話していた私が、二人の旅行を楽しめるようになったこの奇跡。


私達はやはり、自分の人生の唯一の創造主(クリエイター)なのだということだ。


おじさん、おばさんのカップルは、さすがにツーショットを誰かに頼むのは憚られたので、最後に奮発して、思い出にデジタル写真を買ったのだった。

ホグワーツ城を窓の外に、魔法の杖を持った熟年カップルは、以外と嬉しそうにホグワーツエキスプレスの座席に収まっていた(笑)


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